「嫌いが好きに変わる瞬間」

当協会では今まで、1000人以上の子どもたちにパステルアート講座を提供してきました。

講座の中では毎回、毎回こちらがドキドキするような
ステキなドラマが起こります。

子どもたちの中の、才能の芽が花開く瞬間
想像力がはじける瞬間
好奇心が膨らみ、目の中に光が宿る瞬間

そんな奇跡のような瞬間をたくさん目にしてきました。

今日はその中から、
「嫌いが好きに変わる瞬間」
のお話をしようと思います。

とある小学校へ行った時のこと。

その日は定員20名が満席の状態で講座が始まりました。

今日の主役は、その参加者の中にいたヒロト君(仮名)。

講座はいつものように道具の使い方と、簡単な描き方だけを
説明したら、あとは子どもたちの時間。

さぁ、思い思いの創作がスタートしました。

みんなワイワイしながら、好きな色のパステルを選んだり
削ったりしています。

ゆびに付けて直接ぬっていく感触を、楽しみながら描いています。

そんな中、少しだけ気がかりなことが・・・

参加した子どもたちの中で、ヒロト君だけは
初めから何か、浮かない表情、暗い表情をしていたのです。

もちろん、はじめて体験する子も多いパステルアート。

どうやってやるんだろう?
うまくできるかなぁ?
できなかったらどうしよう?

そんな不安と、期待が入り混じることはよくあることです。

でも、講座が始まり、実際に自分でパステルを削って塗ってみれば、そんな不安は子どもたちの中からすぐに消し飛んでしまいます。

ところがヒロト君、削って塗り始めて少したっても
その表情は変わりません。

少しだけ不安になりましたが、
曇った表情ながらも、ヒロト君が絵を描き続けていたため
こちらも様子を見ていることにしました。

そうこうしているうちに
みんな1枚目を描き終わり、もう1枚描きたい!と言い出して
次々に新しい紙を取りに来ました。

ふと見るとその列の中に、ヒロト君の姿が。
その表情は、先ほどよりも幾分和らいでいます。

1枚目が出来たんだね
と聞くと、小さく頷きました。
もう1枚描いてみる?と聞くと
「うん」と、また控えめに頷きます。

よかった、楽しんでくれているみたい。
と安堵し、それからまた様子を見ていると・・・

なんと、2枚目も描き終わり
3枚目の紙が欲しいと言ってきたのです。

驚きながらも新しい紙を渡しました。

すると彼がポツリと、私にだけ聞こえるような声でこう言ったのです。
「ボク、絵は苦手だけど、これだったら出来る。」

それを聞いた瞬間、とてつもない衝撃が走りました。

そうか、そうだったのか。
あの暗い表情のワケは、それだったのか、と。

ヒロト君の中で、苦手だと思い込んでいたもの
上手くできず、苦手だったからこそ好きになれなかったもの
それが、好きに変わった瞬間でした。

この時点で、彼の中の絵に対する苦手意識はもう、すっかり消えていました。

なぜなら、3枚目の絵ではもう
私たちが用意した型紙を使わずに
自分の描きたいものを描いていたからです。

実は講座が終わった後、先生から声をかけられて
こんな話をされました。
「ヒロト君、絵があまり好きじゃなくて、パステルアートをやって大丈夫かしらと思っていたのよ。
でもまさかあんなにたくさん描くなんてね。ビックリしたわ~!
嬉しそうな顔してたし、楽しかったみたいでほんとに良かったわ!」
と。

そんなヒロト君が、講座終了後に書いてくれた感想がこちらです。

1人でも多くの子どもたちに、こんな最高の瞬間を味わってほしいと思います。